自己批判の声とコンパッション
札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。
札幌市民なら誰しもが知っているであろう地下街オーロラタウンにある「小鳥のひろば」。通勤経路上にあるので毎日のようにそこを通るのですが、その度に思い出すことがあります。
おかげさまで当オフィスも来月の初旬に3周年を迎え、4年目に突入しようとしています。今もなお発展途上中の当オフィスですが、1年目に比べると当オフィスをご利用くださるクライエントの数は格段に増えました。先日占星術のセミナーを受講して判明したことなのですが、星廻り的に、私は「無謀な挑戦」をする人間(苦笑)だそうで、独立開業もかなり「無謀な挑戦」でした。「始めたら何とかなるだろう!」くらいにしか思っていなかったので、準備不足でしたし、ビジネスの知識などはゼロ。「世の中、そんなに甘くない!」ということに気づくには、そう時間は要りませんでした。
待てど暮らせど、問い合わせや予約の電話もなければ、メールもない。インターネット上での検索順位を上げるために、毎日、せっせとブログを更新する日々。でも、検索順位もそんなにすぐには上がりません。予約の申し込みもない毎日に絶望していた日々は、半年弱続きました。
ある日のこと、いつもと同じように、オフィスに向かう途中、小鳥のひろばを通りかかりました。あれは、地下街がオープンする10時ちょっと前のこと。清掃員の方が綺麗に掃除をしていたのですが、その清掃員の方を目にしながら、突然涙がこみ上げてきました。
「この清掃員さんが住処を綺麗にしてくれるので、彼女はインコたちに感謝されているに違いない。でも、私は社会のためにも、誰の役にも立っていないダメな人間。情けない。」
そんな自分自身を批判する声が、一瞬、私の頭の中を過ぎりました。そして、それに続いて、いろんな声が頭の中に浮かんできました。
「仕事らしい仕事は、何にもしていない」
「イイ年して、誰の役にも立ててないだなんて、恥ずかしくないの?」
「偉そうなこと言ったって、稼げてないんじゃ話にならないわ」
次から次へと出てくる自分を批判する声の数々に圧倒されて、こみ上げてきた涙を止めることはできませんでした。オフィスに到着してひとりになって落ち着こうとしましたが、止まるどころか、涙は流れ出てくる一方で、しばらくオフィスでひとり泣きしたというエピソードがあります。
今となっては「そういう時期もあったよなぁ」と笑って話せるエピソードなのですが、当時は、本当に気持ちがドーンと沈み込むほど、精神的にはキツい出来事だったことには間違いありません。
抑うつや不安などに苛まれる人の多くは、このような自己批判や先日のブログでも取り上げた「恥」の感情に苛まれています。このような人に対して「もっと、自信を持った方が良いよ!」と言って励まそうとしても、うまくいかなかったという経験をお持ちの方は多いと思いますが、なぜ励ますだけではうまくいかないのでしょう?
自信を築くためには、まず、自己批判的な声や恥の感情から解放されることが必要だからです。そこで大切になってくるのが「コンパッション=思いやり」の心です。
自分の中にある批判的な声は、ある意味、私たちを守ってくれる役割を果たしてくれています。しかし、その一方で、それらが主導権を握ってしまうと、私たちは自分らしく生きることができなくなってしまいます。だからと言って、批判的な声や恥という感情を一切排除してしまう…ということではありません。それらが果たす役割を理解し受けとめつつ、「思いやりをもった自己」が主導権をもってイキイキと生きることができるよう「コンパッション」を育むことが大事なのです。
昨晩会った友人に「変わった」と言われました。この1年半ほどで、私は良い意味で「かなり変わった」そうです。この1年で大きく変わったと自覚していることのひとつは、自分自身に対する「コンパッション」が育ってきているということ。そのおかげで、確実に1年前の自分よりも今の自分の方が「生きやすい」と感じています。状況が大きく好転しているわけでもなく、ある意味、以前より数段難しい局面に立たされていながらも、「大丈夫」という感覚を持つことができているのも、「コンパッション」が順調に育まれているからだと思っています。
この動画も、先月のコンパッションフォーカストセラピ(CFT)のワークショップでご紹介いただいたものです。アニメーションの中では、実際に幻聴が聞こえていて、それに悩ませれる青年を主人公に描かれていますが、幻聴として表現されている自己批判は、精神障害の有無にかかわらず、誰しもが悩まされるもの。CFTが、どのように自信を築き上げていくために役に立つのかをわかりやすく説明してくれる動画です。是非とも、ご参考にしてみてください!
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