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過去は山の向こうに

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

2月に入ってくると、ちらほら別れの季節が近づいてきていることを感じさせるニュースを耳にすることがあります。一般的に「別れ」は寂しいものですが、カウンセリングという場面に限っては、別れは、クライエントにとってもカウンセラーにとっても喜ばしいもの。先日も、あるクライエントさんとお別れをしました。

「この2週間はどうでしたか?」という私の言葉でスタートしたセッション。次の瞬間に発せられたクライエントの言葉を耳にして、このカウンセリングは今日で終わりになることを確信しました。

「ずっと、この(胸の)辺りにあったモヤモヤがスーッとなくなって、今は不思議とスッキリしているんですよね。過去のことなのに過去だと思えずに、ずっと自分の中に長年あってモヤモヤしていたものが、不思議と今はないんですよ。何というか、過去にあった(起きた)ことは、今は山のずっと向こうにある遠い感じで、それを自分はここから落ち着いて眺めているというか…。何とも不思議な感じです。」

このクライエントさんは母親に対して抱いていた気持ちを整理したいと、当オフィスにお越しになりました。子どもの頃に母親に言われた(された)嫌なことを、未だに根に持っている自分自身に対して「恥ずかしい」「情けない」と自分を必要以上に責めるようなところがありました。しかし、クライエントが感じ取っていた「恥」という感情の影にひそめていたのは、自分の自尊心が傷つけられたことで生じた「怒り」や「悲しみ」という感情。「恥」はそれらを抑え込むために生じた、表向きの感情だったのです。

子どもの頃に起きたエピソードを聞きながら、「そんなこと(クライエントの母親が口にした嫌なこと)を言われてる人を目の当たりにしたら、嫌なことを言っている人に対して、どんな気持ちを抱きますか?」とクライエントに何度も問いかけました。それは、「恥」の奥深くに追い込められてしまってアクセスを失ってしまっている感情へクライエントを導くためのガイダンスでした。

このような状況で「怒り」や「悲しみ」という感情が生じるのは当然のことであることを丁寧に説明し、それらの感情にクライエント自身がしっかりと触れることができたとき、クライエントの目からは自然と涙がこぼれ落ちました。このようなプロセスを幾度となく繰り返すことで、クライエントはそれまで執着していた過去から自然とスーッと解き放たれたのです。今という瞬間をしっかりと感じとることができて、過去ははじめて「過去」になります。自分自身の心の中に「今わきおこってきている」感情に触れることができたからこそ、このクライエントの過去は、真の意味で過去になったのでしょう。それまであまりにも身近なところにあってクライエントを苦しめてきた過去。「山のずっと向こうにある遠い感じ」という然るべきところにおさまって、そのクライエントはこんな言葉を残して、私のもとを去って行きました。

「これからノビノビと人生を楽しめそうです。」

そして、その言葉を聞いた私も、きっとそうなるだろうと確信しました。

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臨床心理士  向 裕加

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