カウンセリングオフィスProgress

English Page

カウンセラーブログ

トップページ > カウンセラーブログ > 自分を護るために必要な「怒り」という感情

自分を護るために必要な「怒り」という感情

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

先日、友人と話していたとき、ふと、小学生の頃のことを思い出しました。

小学校6年生の頃だと記憶しています。母に頼まれて、近所のスーパーに行ったときのこと。レジで支払いをするためにお金を出したとき、私の後ろにいた見知らぬおばさんがこんなことを言ってきました。

「あら〜、綺麗な手しているわね。家でお手伝いなんてしてないでしょ?だって、それは苦労していない手だもんね。ダメよ、若いときから苦労しないと、ろくな大人にならないんだから。早く帰ってお手伝いしなさい。ね!?」

ゴミの日にゴミを捨てることやこの日のように近所にお遣いに行くこと、そして、プールに通っていた妹の送り迎えをすることは、私の役目として与えられていたのでやっていました。でも、確かに、お茶碗を洗ったり、掃除をしたり、お風呂を洗ったりすることはなかったので、その見知らぬおばさんにそう言われて、「私は、他の人みたいに苦労していないダメな子なんだな」と罪悪感を覚えたと同時に、何とも言えないモヤモヤとした気持ちにさせられました。

今になって当時のことを振り返って考えてみると、そのモヤモヤとした気持ちというのは、無断で「私の領域」に土足でズカズカと入り込んできた、その見知らぬおばちゃんに対する「怒り」だったと思います。ただ、当時の私は小学生。「子どもが大人にくってかかるのはダメなこと」と教えられてきたこともあって、理由がどうであれ、小学生私が年上のおばちゃんに対して「怒り」を覚えてはいけないと、「怒り」を「怒り」として認識することなく見過ごそうとしていたのでしょう。行き場のない私の「怒り」は「モヤモヤ」という漠然とした気持ちに変身して、その存在を私に気づいてもらおうとしていたのだと思います。

でも、よく考えると、小学生であれ、私が「怒り」を抱くのは当然なんですよね。というのも、このおばちゃんは私の何を知っている訳でもないのに、勝手に「私」という人間の領域に入り込んできて、私の人となりを勝手に「決めつける」ようなことを言ったんですから。しかも、判断基準が「手」オンリー。そして、極めつけは「苦労していない=ろくな人間にならない」という、非論理的で、エビデンスもないであろうおばちゃんの価値観の押し付け。「怒り」が湧き上がってくるのは、「私の領域にズカズカと入ってくるのは失礼なことです。これ以上入ってこないでください。」というメッセージを相手に伝えることで、自分自身を護るため。湧き上がってしかるべき感情なのです。時として、自分と他者の境界線(バウンダリー)をちゃんと認識することなく、ズカズカと他者の領域に土足で踏み込んでくる人がいます。大抵の場合、「正論」や「常識」、または「あなたのため」というコンセプトを振りかざして、他者の領域に踏み込んでいく自分自身の行動を正当化しようとします。このおばちゃんは、「若いときから苦労しないと、ろくな大人にならないんだから」と言っていましたが、そこには「あなたが立派な大人になるように、あなたのためを思って、わざわざ私が苦言を呈してあげているのよ」という無言のメッセージが隠されていたんですよね。子どもながらも、私がモヤモヤしたのも無理はないのです。

世間での「普通」や「常識」、または「あなたのため」というコンセプトを持ち込まれると、言われた方は「『え、それってちょっと違うんじゃない?』と思う自分こそが変なのでは?間違っているのでは?」と思ったり、「せっかく私のためを思って言ってくれているのに…」と罪悪感を覚えがちですよね。でも、それは相手が他者を自分の思い通りに動かそうとする戦略のうちのひとつであることにご注意あれ。

自分の家に勝手に土足で入ってこられたら、誰でも「怒り」を覚えますよね。心のあり方も、同じこと。心理的な境界線を勝手に超えて踏み込んできた人に対して、「怒り」を覚えるのは極々自然なことです。ただ、小学生の頃の私のように、「怒り」を「怒り」として捉えることができずにモヤモヤしている人も多いと思います。そんなときは、ちょっと考えてみてください。相手が土足で、あなたの心の中にズカズカと入ってきてはいないか?と。もし、そうであれば、「怒ってもいいんだよ」と「怒り」を覚える自分に許可を与えてください。なぜならば、それは自分を護る上で、とても大切な感情だから。

→ ご予約
→ お問合せ
カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

English Page


lgbt Ally
lgbt Ally

カウンセリングオフィスprogress

〒060-0042
札幌市中央区大通西1丁目14-2 桂和大通ビル50 9F