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前進するために必要なこと

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

昨年末、トータルで1年と10ヶ月間カウンセリングに通ってくださったクライエントさん(30代・女性)とお別れをしました。

彼女は幼い頃から両親との関係性の中での悩みを抱え、学校でも対人関係で頭を抱えることが多く、長らく学校に行けない日々を過ごしていました。。周りが自分のことをどのように思っているのか?ということを常に考え、不安に苛まれる日々を送っていたため、なかなか学校や仕事などの集団生活を強いられる場に身を置くことができませんでした。

私のところにやってきたのは、長らく通っていた心療内科のクリニックが閉院してしまったことがきっかけでお越しになりました。ドクターとの関係が良好だったため、心療内科のドクターからも「もう、通院しなくても大丈夫だよ」と言われていたようなのですが、プッツリとサポートが全くなくなってしまう…というのも不安ということで、私のオフィスにやってきてくれました。お越しになった当時は、外出は週1日の頻度で習い事に通っていた程度。街中を歩いていても、すれ違う人にどう思われているのかが気になって不安だということをしきりに訴えていました。そんな彼女が私のところで定期的にカウンセリングを継続して数ヶ月(恐らく、3ヶ月程度)経ったとき、こんな相談をされました。

「アルバイトしてみようと思うんですけど…」

それまでアルバイトも仕事もしたことがなかった彼女は、そんな自身の経歴から「絶対に採用されるはずがない」と思い込んでいました。でも、ここにきてチャレンジしてみようという気持ちがわいてきたようで、私は彼女のこの気持ちを大切にしたいと思い、彼女を後押ししたところ、彼女は採用されました!

とにかく、初めてのことの連続。もともと、対人関係に対する不安が強かったので、職場での人間関係については「大丈夫か?」という思いを抱いていましたが、果敢にチャレンジする彼女をサポートしていきました。詳細は割愛しますが、彼女は仕事自体はエンジョイしてやっていたものの、彼女のボスがハラスメント体質の人。彼女に「私でも、こんなところでは仕事はできないわ!本当によくやってるよ〜」と何度言ったことか…。それでも彼女はそこで働き続けたのです。

実は、12月に彼女がオフィスにやってきたのは半年ぶりのこと。その間、「どうしているかしら?」とは思っていたのですが、業界的には「便りがないのは良い報せ」なので、そんなに深く考えていませんでした。でも、こんなタイミングで予約が入ったので、何か起きたのかなぁ…と心配しましたが杞憂に終わりました。というのも、アルバイトで働いていたところをついに彼女は辞めたのですが、間髪入れずに、新しい仕事が決まったとのこと。しかも、正社員で、彼女が勉強してきたことが活かせる業種だったのです!

初めてオフィスにやってきたときには、彼女も私も予想ができなかった驚きの展開。半年ぶりにカウンセリングにやってきたのは、始めてまだ10日も経たない職場で慣れないせいかストレスを感じることが多く、不安になったからとのこと。でも、話をよく聴いていくと、彼女なりにできる対処はしっかりとしており、しかも、助けになってくれる人には助けを求めることができているんですよね。そして、「不安に感じるのも、ごくごく当然だよね〜」とフィードバックすると、「そうですよね。まだわからないことだらけで、不安になるのは当たり前ですよね」としっかりと「不安」という感情を受けとめることができるんですよね。さらに、私が「『不安になるのは当たり前』と思えた今、どんな感じがしていますか?」と尋ねると、彼女はこう答えました。

「なんか、ホッとした感じですね。『不安になったらダメ!』と思っていたときよりも、不安になって当たり前だよね…と思えた今の方が『頑張ろう!』という気持ちが自然に出てきました」…と。

彼女とのカウンセリングでは、基本的に「感情」を受けとめることにフォーカスを当てていきました。というのも、頭の良い方だったので、起きた出来事を理知的に「頭」で理解しようとして「なぜ?」「どうして?」「どうしたら?」という問いかけに答えを求めることが当初は多かったです。でも、「どんな気持ち?」となると、途端に答えることができなくなる。というのも、彼女の身近なところで、彼女の「感情」を受けとめてくれる存在がいなかったから。むしろ、「感情」を出すと否定されるので、自分自身が傷つかないためにも、彼女は自分自身の「感情」を長い間必死に押し殺してきたんですよね。

「そんなときは、不安になっちゃうよね〜」「そんなことを言われたら、腹が立つのも当然だよ」「そんなことがあったら、恐いよね〜」

そういうやりとりを何度も何度も繰り返す中、彼女自身は自分の「感情」に触れ、そういう「感情」を持っても良いということを自分自身に許可し、そして、ありのままの「感情」を受けとめることができるようになっていきました。「感情」、特に「ネガティブな感情」に触れると、感情が暴れ出して、自制心を失ってしまうのではないか?ということを彼女は恐れていましたが、実際に起きたことは全く逆。感情にしっかりと触れることで感情は自然と穏やかになってくれること、そして、感情に支配されるのではなく、感情は自分自身がコントロールできることを彼女は学びました。そして、適切な自己主張や積極的に人の輪に入っていくことができるような女性へと変化していきました。

逆説的かもしれませんが、前に進むのに必要なのはポジティブな感情に無理矢理シフトすることではなく、実は「ネガティブな感情にしっかりと触れる」ことなんですよね。このクライエントさんも、当初は「何事もネガティブに思ってしまう自分」にダメ出しして、ネガティブな感情をシャットアウトしていましたが、ネガティブな感情にしっかりと触れることができるようになってきたら、自らの力で前に進む推進力を自然に身につけてくれた感じがします。

ただ、誰しもが彼女と同じように、ネガティブな感情に触れることへの不安や恐怖を抱いているものです。カウンセリングやセラピーの良いところは、自分ひとりで向き合うのではなく、ネガティブな感情に触れる体験をガイドしてくれるカウンセラーやセラピストがいるということ。

「感情」にフォーカスを当てたセラピーである感情焦点化療法(Emotion Focused Therapy:EFT)の国際認定レベル2のトレーニングを修了したEFT Level 2 セラピストは、現在のところ、北海道では私ひとりだけです。北海道で唯一のEFT Level 2 セラピストと共に、感情に触れる体験をしてみませんか?新しいドアが開けるかも知れません。

※ 当該クライエントからはブログへの掲載許可をいただいております。

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臨床心理士  向 裕加

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