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セルフコンパッションのパワー

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

京都でのマインドフル セルフ・コンパッション(Mindful Self-Compassion: MSC)の合宿ワークショップから戻ってきて、今日で早2週間が経とうとしています。このワークショップで学んだエッセンスを少しずつカウンセリングの中で活用させてもらっているのですが、そのパワーに驚かされます。

マインドフル セルフ・コンパッションの共同創始者であるクリスティン・ネフ(Kristin Neff)博士は、セルフ・コンパッション(self compassion、自分への慈悲・思いやり)を以下のように定義しています。

私たちが苦しんでいるときに、私たちが心から愛する誰かに心をかけてあげるように、自分自身に心をかけてあげること。自分への慈悲には、自分への優しさ、共通の人間性、マインドフルネスを含む」

ちょっと、ピンとこないでしょうか?ネフ博士の言葉を借りて、もう少しイメージしやすいようにセルフ・コンパッションを説明すると、以下のような説明になります。

"With self-compassion, we give ourselves the same kindness and care we'd give to a good friend."

仲の良い友だち向ける優しさやいたわりと同じような優しさといたわりを自分自身に向けること…とでも訳しましょうか。

私は、よくクライエントに「あなたが陥っている状況と全く同じ状況にあなたの仲の良い友だちも陥っているとイメージしてみてください。その友だちに『話を聴いて欲しい」と頼まれて、あなたは話を聴いています。ひと通り話を聴き終わって、あなたはその人になんて声をかけますか?」と訊くことがあります。

大抵の場合、クライエントは「いや〜、よく頑張ってるよ」「そんなことがあったら、辛くもなるよ」「それは苦しいよね」などと声をかけると答えます。そして、私が「では、ご自身には一体どんな言葉をかけていますか?」と尋ねると、皆さん、苦笑します。というのも、「どうして、もっと頑張れないの?」「もっと辛い思いをしている人はたくさんいるのに、そのくらいで辛いと言ってるなんてダメ!」「そんな弱音を吐いて、みっともない」…など、とても辛辣な言葉が次から次へと出てくるから。

長年にわたって染みついた思考パターンなので、そう簡単には変わりませんが、①「どうして、もっと頑張れないの?」と自身を責めたり批判するような内なる声に気づくこと、②「キツイなぁ」という気持ち(感情)を「それはダメなこと」「良くないこと」などとジャッジメントせず、そのまま受け容れること、③そして、仲の良い友だちに声をかけるように自分自身に声をかけるとしたならば、どんな言葉をかけるか?をイメージして、実際に口に出して(心の中でもOK!)言ってみる…ということを繰り返していくと、等身大の自分自身を徐々に受け容れることができるようになります。今日、お越しになってくださったクライエントさんが、まさにそういう方でした。

顔を合わせた瞬間、すごくスッキリとした表情をされていて、まるで顔にかかっていた雲が晴れたような感じ。その印象をお伝えしたところ、ご本人も同意してくださったのですが、「別に、特に、何かがあった訳ではないんですよ。まだ、問題だって片付いていませんし…」と。しかし、セッション中、お話をお伺いしながら、気づいたことがありました。

この方は周囲の気持ちや欲求を優先にして自分のそれを後回しにしがちだったせいか、自分の感情や欲求がなんであるのか?がよくわからない…とおっしゃっていた方なのですが、この数ヶ月、「モヤモヤ」とした得体の知れない感情がわきあがってきたときはスルーするのではなく、「なんだろう、この気持ち?」と意識的に向き合うようにしてきました。その過程の中で「あぁ、私、怒っているんだな」「蔑ろにされたことが悲しいんだわ」などと自分自身の感情に気づくことができるようになり、また、少しずつ「怒るだなんて、器が小さくてダメな人間だわ!」などといったジャッジメントをせずに、ただただ「あぁ、私、怒っているんだ」と怒りの感情をマインドフルに受け容れることができるようになったのです。そして、少しずつ「そんな扱いをされたら怒るのも当然よね」と、心の中で自身に優しく思いやりのある言葉をかけることができるようになっていたのです。

まさに、これがマインドフル セルフ・コンパッション!そう気づきました。どおりで、スキッとした表情をしているわけですよね。そんなクライエントさんを見ていて、私も自分のことのようにとても嬉しくなりました。そして、そのクライエントさんは、こうおっしゃいました。「自分自身と向き合って、どんな気持ちがあるのか?自分はどうしたいのか?を探っていくプロセスが、きっと良かったんでしょうね。カウンセリングで、こんなに人って変われるものなんですね。」

とてもタイムリーなのですが、今朝、京都のMSC合宿で出会った仲間のひとりが、マライヤ・キャリーの『Hero』の日本語訳つきの動画を紹介してくれました。聴いたことは数え切れないほどある曲なのに、今の今まで「詞そのもの」に目を向けたがありませんでしたが、歌詞の内容はセルフ・コンパッションそのもの!早速、そのクライエントさんにもセッションの中でご紹介させていただいたのですが、「まさに、私が体験しきたこと、そのもの。私のことみたいですね」と言いながら、穏やかな涙を流されていました。是非、皆さんにも観ていただきたいです!

(もし、字幕が出てこない場合は画面右下のYouTubeという文字の左となりにある「設定」のボタンをクリックして、字幕→日本語と設定してください)

数ヶ月前までは人生そのものを根本から揺るがすような局面に立たされていたクライエントさんでしたが、自分自身の内なるヒーローを見出すことで、この苦難を乗り越えるために必要とされる力を手に入れました。そして、「次のステップを踏み出したい」という力強い言葉とともに、オフィスを後にされました。「これが、セルフ・コンパッションのパワーか…」と感動を覚えたと同時に、素晴らしい体験をシェアしてくださったクライエントに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました!

このような素晴らしい変容をひとりでも多くのクライエントに体験していただけるよう、まだまだ学びを深めていきたいと思います。

*クライエントご本人から許可をいただいておりますが、内容については個人が特定されないよう若干の加工と修正をかけております。

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臨床心理士  向 裕加

【12月のお休み】
12/2(日)、12/3(月)
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12/23(日)、12/24(月)
12/30(日)、12/31(月)年内の最終営業日は12/29(土)とさせていただきます。
なお、年明けは1月4日(金)から営業を開始いたします。

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