札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

今日の早朝、すごい風でしたねー！風の音で目が覚めました。窓の外をみると、道路には風で吹き飛ばされたであろう落ち葉がたくさん。裸ん坊の木々も増えてきて、冬の足音が近くに聞こえたように思えた朝でした。

そんな朝の鉛色の空に感化されたせいか、洗面所で支度をしているとき、先月執りおこなわれた祖父母の法要での母と私のやり取りが、ふと思い出されました。

幼い頃から、母には「ちゃんとしなさい」ということを常日頃から言われてきました。「ちゃんとしていないと、恥ずかしい思いをするのは、あなたなのよ」。母からそうしつけられたお陰で、20代の頃から「あなたは、ちゃんとしているわね」「しっかりしているね」と評価されることも多く、年上の方たちからも可愛がられることが多かったのも事実です。そういう意味では「ちゃんとしなさい」と言われてきたことに感謝していないこともないのですが、さすがに先月の法要での母の「ちゃんとしなさい」には、「カチン」ときました。

千葉に住む父方の伯母夫婦から、秋になると毎年梨が両親のところに箱で送られてきて、私もそのお裾分けをしてもらっています。今年も美味しくいただきました。その伯母夫婦が10月の祖父母の法要に参列するために札幌にやってきたのですが、私が梨をもらったときから、母は「ちゃんとお礼言っておいてね」と念を押すのです。その後も数回母からは同じことを言われ、毎度のことだと呆れながらも「はい、はい、わかってますよ」と私は返事をするのでした。

そして、法要当日。会場のお寺の広間に入ったとき、伯母夫婦の姿が目に飛び込んできたので、真っ先に私は伯母夫婦のところに行き、梨のお礼を言いました。が、たくさんの参列者を長男の嫁として迎えていた母は忙しく、私が伯母夫婦と話している姿を目にしていなかったのでしょう。法要が始まろうとしているその瞬間に、母は隣りに座っている私に、小さな声でこう言ってきました。

「ねえ、千葉の伯母さんたちに、ちゃんとお礼言ったの？お礼しなかったら、最後まであれこれ言われるのは私なんだから」

長男の嫁、しかも本家の長男の嫁である母は、私に「ちゃんとしなさい」と言い続けてきたのは、表向きは「私のため」になっていますが、「あなたがちゃんとしていないと、責められたり、恥ずかしい思いをするのは私」というのが本当の理由。まさに、これが母親の自己中心性なのですが、母親は無私の存在と思われているため、母親自身も世間もこの自己中心性を認めることはありません。

ですから、「ちゃんとしているのに、『ちゃんとしなさい！』と言われ続けているのは、まだまだ私にちゃんとできていないところがあるのだろうか？」と自分がダメな人間に思えてならなかったり、「どうして、あなたは私が『ちゃんとしている』人間であることを認めようとしないのか？」と腹立たしく思ったりもして、苦しいときもあったのですが、「ちゃんとしなさい」と母が私に言う本当の理由がわかったり、それが誰の問題であるかがハッキリとしてから、自分を責めたり、腹立たしく思ったりすることも少なくなりました。

が！この日は、もういい加減にして欲しいと思ったので、やんわりと言わせてもらいました。

「ここに到着して、お礼は真っ先に言いました。私は、もう41歳です。子どもではありません。むしろ、世の中的にはいい大人です。仕事も独立してやっています。『ちゃんと』していなかったら、そんなことは到底できません。周りから批判されたりするのが嫌だから、『ちゃんとしてね』と私に言うのはもう止めてもらえますか？」

今まで、こんな風に母に言ったことはありませんでした。親子ですが、あえて、敬語でかしこまった言い方をしたのは、母に「私は真剣です」ということをわかってもらうため。それが母にも伝わったのか、母は黙って、それ以上何も言うことはありませんでした。

母娘関係で悩んで来られるクライエントさんの話を深いレベルまで落とし込んで聴いていくと、大抵の場合、母親の自己中心性に振り回されて精神的に（時に肉体的にも！）疲弊してしまっているという構造が明るみになってくるのですが、先ほどお話したとおり、母親は無私の存在と思われているが故に、母親の問題として捉えられることが少なく、娘が悩むことになってしまうことが多いようです。

決して母と私の関係が険悪ということではないので、誤解しないでいただきたいのですが、このような些細なことでも、積み重なれば相当なストレスになるものです。もし、モヤモヤしたものを抱えているようであれば、少しその関係性を紐解いて理解してみるだけでも、スッキリできるものがあるかも知れませんよ。そのお手伝いをさせていただきます。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士　　向　裕加