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私のカウンセラーとしての原点

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

昨晩は、月曜日に悪天候で観に行くことを断念した映画を観に行ってきました。
ドリーム』という映画です。共感できるところが多くて、涙、涙、涙!の連続でした。鼻水まで出てきちゃうくらい(苦笑)。そのくらい感動する映画でした。詳しくは、改めて、別の機会にブログでご紹介させていただきたく思います。

この映画は上映終了が間近なこともあって、昨日は札幌ファクトリーにある映画館のレイトショーでしか上映されていなかったんですよね。なので、愛猫の様子を確認するために一旦帰宅してから、お散歩がてらブラブラと歩きながら、再び、映画館へと向かいました。

映画館へ向かう途中、なぜかわからないのですが、25年前の今時期のことを思い出していました。当時、私は16歳で、カナダ西部にあるブリティッシュコロンビア州のランビーという村の高校に留学していました。
当時の人口はハッキリとわかりませんが、ランビーは現在の人口は約1800人というとても小さな村(写真がランビーです)。そこそこ都会な札幌で生まれ育った私は、ここで1年間暮らすことができるかどうか不安で、ランビーに到着後1週間は文字通り泣いて暮らしていました。家族から離れてひとり、言葉も満足に通じない。友だちも知り合いもひとりもいないのに、高校に通わなければならない。念願の留学なのに、そんな決断をした自分自身を恨めしくも思ったりしていました(勝手ですよね…汗)。

やはり何よりも大変だったのが、言葉が通じないということ。なんとなく耳には入ってくるものの、ネイティブが喋る英語のスピードは、当時の私には全くキャッチできないくらいのハイスピードで、何を言ってるかもわからない。言いたいことの10分の1も表現することができない。だけれども、授業には出なくちゃならないし、わからないことは聞かなければ解決できない。助けてくれる同世代の友だちもいない。精神的に辛い毎日の連続でした。

唯一の救いは、ホームステイ先が良いファミリーだったこと。小学校の先生のお父さんと主婦のお母さんに、高校卒業したばかりのお兄ちゃんと猫。学校がどんなに大変だったとしても、家に帰ると「今日1日はどうだった?」などと訊いてくれ、拙い私の英語を一生懸命に聴こうと努めてくれる家族がいることが、どれだけ私の心の支えになってくれたことか…。そして、自分の下手くそな英語や言いたいことが伝わって気持ちを受けとめてもらえたと感じたときの喜びは、とてつもなく大きなものだったことを今でもハッキリと覚えています。

英語がうまくしゃべれなかったときは、伝えたいと思っていることが思うように伝えることができずに、もどかしさやジレンマを感じていましたし、他の人が何を言っているのかがわからないときは、自分だけが蚊帳の外にいるような孤独感に苛まれていました。そんなことは初めての経験だったので、私自身はかなり戸惑いましたが、いつも辛抱強く私が言わんとしていることに耳を傾けてくれるファミリーの受容的な態度が私の言葉や気持ちをうまく引き出し、受けとめてくれたおかげで、私も言いたいことが少しずつ言えるようになりました。

それに伴って意思疎通も徐々にスムースになり、自分のことを「わかってもらえた」という喜びを実感することも増え、英語も少しずつ上達していったのです。英語が少しずつわかるようになると、学校での授業も理解できるようになり、クラスメートとコミュニケーションを取ることも増え、友だちもできました。当初の不安とは裏腹に、次第に私の留学生活はとても充実したものへと変化していったのでした。

今、よく考えてみると、私のファミリーは、私にとっての良きカウンセラーでした。発音はめちゃくちゃでトンチンカンな英語を話していても、非難されたことは一度もなく、むしろ、彼らは「ゆかが言いたかったのは、こういうこと?それとも、こんなことかしら?」と丁寧に聞き返してくれました。わからないことがあっても「わからない!」と会話を終了するのではなく、根気強く、理解できるまで、色んな質問をしてくれました。彼らの質問に答えるために、私は自分自身の気持ちや考えを振り返ったり、それを言葉で表現することを学びました。

この過程は、まさに、カウンセリングと同じプロセス。このファミリーと出会い、このようなプロセスを経験することができたからこそ、私は成長することができた。25年の歳月を経て、そんなことに気づきました。色んな人に「どうして、臨床心理士という職業を選んだのですか?」と訊かれる機会はいままで多々ありました。しかし、これといった理由や動機などが見つからず、私自身、返答にいつも困っていましたが、どうやら私が臨床心理士を目指した原点はここにありそうです。

カウンセラーの「共感的な理解」と「受容的な態度」がクライエントの成長を促進する条件であると唱えたのは、「カウンセリングの父」と呼ばれているアメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズ。まだカウンセリングの存在すら知らなかった25年前、私はホームステイ先のファミリーの実にカウンセリング的な関わり合いによって、成長をさせてもらいました。このような関わり合いの素晴らしさを多くの人と分かち合いたい。そんな潜在的な意識が、私を臨床心理士という職業へと導いてくれたのかも知れません。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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