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カウンセリングにおける時間設定と依存の関係

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

先日のブログの反響なのか、「カウンセリングを受けて傷ついてしまった」というレスポンスをいただいております。個人的には残念なことだと思うのですが、ざっくりとしたお話しか聞いていないにもかかわらず、「???」と思うことが多々あります。これらの「???」がクライエントの傷つきを生じさせているように思ったのですが、その「???」のひとつに、カウンセリングの時間の設定が曖昧だということが挙げられます。

当オフィスでは初回は90分、2回目以降は50分という時間を設定しています。そして、ペースも多くて週に1回を限度としています。「もっと話したい」「もっと聴いてほしい!」という方もいらっしゃいますが、時間は無限ではないことに加え、時間や日時を設定することには治療的な意味があるのです。

カウンセリングでは、普段話すことができないこころの内をカウンセラーと対話していきます。普段抑圧している苦悩や悩み、怒りなどを言葉で表現することで苦痛が解消されると同時に、一種の安堵感や安定感を得ることが可能になります。カウンセリングを受けて「スッキリしました!」というのは、まさにこれですね。専門的な用語では「カタルシス効果」と呼ばれるもので、平たく言うと「こころの浄化作用」と表現することができるでしょう。

カタルシス効果を得ることは大切なことではありますが、いつでも、どこでも、どれだけ長くても…という時間や日時の枠組みが曖昧になってしまうと、クライエントの依存性を助長させることにもなりかねません。というのも、カタルシス効果だけでは問題の根本を解決することはできませんし、効果の持続性もそうそう長くはないからです。

時間や日時が設定されているにもかかわらず、「辛いので、明日にでも話を聴いて欲しい!予約を早めたい!」というクライエントの要望に応えていけば、クライエントが「カウンセラーがいなければ、モヤモヤした気持ちを解消することができない」という、心理的依存状態に陥ってしまうのも時間の問題です。これは、クライエント自身の問題に対する解決能力を削いでしまうことにもなりかねません。

「辛い」というクライエントの気持ちを受けとめることは大事なことです。しかし、「辛いなりにも、大変なりにも、次のカウンセリングの予約時まで何とかやってこれた」というクライエントの健康的な側面を本人にも認識してもらうことも、とても大事なことなのです。そうしてもらえるために、カウンセラーが、クライエント自身ですら気づいていない「次のカウンセリングの予約まで何とかやってこれるだけの力」を率先して信じることが必要なのです。

クライエントの健康的な側面やまだ気づいていない力を引き出し、それらを育むことをサポートするのが、私たちカウンセラーに課せられた役割です。また、カウンセリングは延々と続けられるべきものではなく、クライエントひとりひとりが「自分で自分を助ける力」を身につけ、様々なストレスがありながらも「自分なりにそのストレスと上手に向き合う」ことができるようになるまでのサポートであるとすると、クライエントのカウンセラーに対する依存性は、クライエントの「自立性」や「自律性」を阻害する要因でしかありません。このクライエントの依存性を助長させないためにも、「時間」や「空間(場所)」という枠組みというものを設定することが、カウンセリングの効果を最大限にするための基本的、かつ、必要不可欠な要素でもあるのです。

最近ではLINEでカウンセリングをする…ということも多いようですね。でも、LINEは、このカウンセリングの「時間」や「空間」の設定をすることが非常に難しく、曖昧になりがちだと個人的には思います。「『既読』になっているのに、どうして返事がこないんだろう?」ということを不安が強いクライエントは気にするでしょうし、カウンセラーからの返事があるかないかで一喜一憂するでしょうから、精神的に安定するどころか不安定にさせてしまうことも容易に想像がつきます。カウンセリングを受けたら心が穏やかになるだろうという期待とは裏腹に不安定になってしまえば、カウンセリングが傷つき体験になってしまうのも無理はないかと思います。カウンセラーの使い方次第だとは思いますが、個人的にはリスクが大きすぎて、積極的に使おうとは思いません。

時間や空間、日時の設定と枠組みというコンセプトは、カウンセラーにとっては当たり前のコンセプトなのですが、カウンセリングを初めて受ける方たちにとっては馴染みのないコンセプトですよね。この他にも、カウンセリングに関する馴染みのないコンセプトや疑問もあるかと思いますので、少しずつ情報発信していくことで、多くの方に安心してカウンセリングを受けていただけるようにしていきたいと思います。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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