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”自称”カウンセラーの被害に遭わないために知っておいてほしい基本的倫理

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

札幌(北海道)の秋は、一雨毎に深さを増していく…とよく言われていますが、ここ数日の雨でグッと秋が進んだ感じですよね〜。先日、北大の構内をランニングしていたのですが、こんな綺麗な紅葉を見ることができましたよ。
イチョウ並木も少しずつ色づき始めてきていました。今月の中旬から下旬にかけて、黄金色のトンネルの中のお散歩を楽しめそうな感じです。

さて、今日はちょっとシリアスなお話をさせていただきます。

時々、「カウンセリングを受けている人に、好きになられちゃうことってないの?」と訊かれることがあります。いつもではないですし、全員ではありませんが、答えは「YES」です。

臨床心理学的/精神医学的な専門用語を使うと、これは「転移」と言われる心理現象で、クライエントからカウンセラーに向けられる相手に対する好き、嫌いといった心理反応のことを指します。好きになったり、憧れたり、甘えたり…などの反応は陽性転移、嫌いになったり、怒ったり、拒否的になったりする反応は陰性転移と呼ばれます。ですから、クライエントから好意を寄せられたときは、陽性転移が起きている…ことになります。

この「転移」の現象は何もクライエントに限られたことではなく、カウンセラーからクライエントに向けられることもあります。それは「逆転移」と呼ばれているのですが、この「転移」「逆転移」のことをカウンセラー側がしっかりと理解していないと、援助関係がそれはそれは大変不健康で、かつ、破壊的なものになってしまう危険性があるのです。

カウンセリングを求めてやってくるクライエントは、元々こころの問題や悩みを抱えているわけですから、自分の話をじっくり聴いてくれたり、受容的に接してくれたり、自分のことを助けてくれるカウンセラーに好意を抱くのは極々当然のこと。ただ、これをカウンセラー側が「転移」であると理解していないと、「俺がいないと、この子はダメなんだ」「頼りなくて、健気なこの子を、俺がなんとかしてあげなくちゃ!」という「逆転移」が起こります。

そもそも、クライエントから向けられている好意を「転移」であると理解していないのですから、カウンセラーが自身の中に湧き上がってくる感情を「逆転移」と理解している訳もありません。このような場合、カウンセラー側が「誰かに必要とされることで自分のこころの問題の穴埋めをしている」可能性があります(これがいわゆる対人関係における「共依存」になります)。特にカウンセラーとクライエントが異性の場合、その援助関係が恋愛関係、また、性的関係へと発展していく危険性を孕んでいるのです。

「クライエントもカウンセラーも、合意の上で恋愛関係や性的関係へと発展していくのであれば、何が問題なのか?」と思うかも知れませんが、職業的な基本的倫理に反しているのが、実に大きな問題なのです。

セラピストやカウンセラー、臨床心理士という立場にある以上、一般的な責務としてクライエントの不利益になるようなことをしてはならないのは常識です。ですから、カウンセラーが「誰かに必要とされることで自分のこころの問題の穴埋めをしている」ということは、クライエントの利益ではなく、カウンセラー側の個人的な欲求又は利益のためにしていることであり、職業的な基本的倫理に反しているのです。

また、治療やカウンセリング・援助の場以外で、私的な関わりをもつようにカウンセラーが求めたり、クライエントのそのような要望に応えることも原則として禁じられていますし、クライエントの問題がどのようなものであれ、クライエントとカウンセラーとの間にキッチリと線引きすることは、カウンセラー側の責任なのです。ですから、その立場を利用して、クライエントと恋愛関係や性的関係を持つことは、本来であればあり得ないことですし、起きてはならないことなのですが、そのようなことをしてしまう”自称”カウンセラーやセラピストが後を絶たないのも、残念ながら事実なのです。

自分の問題が未解決なままで、他人の援助をできるわけがありません。インターネット上で、「自己コントロールができていないなぁ」と感じたり、「転移・逆転移・共依存」という概念をよく理解していなかったりする危うさが散見されるセラピストやカウンセラーを実際見かけます。このような人は、人の相談を受ける前に自分の問題に取り組むべき。ですから、カウンセリングを検討されている方は、カウンセラーを選ぶ際には慎重にご検討ください!

また、カウンセリングや心理療法を受けている中で、「ん、これはちょっと変じゃない?」という言動をカウンセラーやセラピストがとったら、抵抗はあるかも知れませんが思ったことを率直に伝えてみましょう。そして、カウンセラーから戻ってきた言葉がしっくりくるものかどうかを考えてみてください。もし、疑問に思ったら、そこの責任者や他の機関の専門家にセカンドオピニオンを訊くことをお勧めします。

欧米では「カウンセラー」「セラピスト」と名乗るためには、実際に自分が仕事をする州でライセンスを取得する必要がありますが、日本には、現在のところ、欧米のような法的な制約はありません。ですから、ぶっちゃけた話をすると「私はカウンセラーです。カウンセリングをしています」と言ったら、それでまかり通っちゃいます(この点については、今後、何かしらの制度を整えてほしいところですね)。絶対に大丈夫!とまでは言えませんが、ある程度統一されたカリキュラムにしたがって専門的に心理学を学び(もちろん、職業倫理についても学びます!)、指導者の下でカウンセリングのトレーニングを受け、全国統一の試験を受けて合格した臨床心理士が望ましいかと思います。

カウンセリングを受けようとする方が不利益を被らないことを、心から願っています。

参考URL: 心理療法にセックスが入ってくるとき

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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