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女性アスリートと摂食障害

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

「北海道マラソンの日はピンポイントで暑くなる」というのは、ランナーたちの間ではほぼ定説化されている話なのですが、本当に北海道マラソンが終わったら涼しくなってしまいましたよね。今日で8月も終わり。夏が終わってしまうのか…と思うと、何だか寂しい気持ちでいっぱいです。

さて、北海道マラソンの1週間前ほど前に、女子マラソン元日本代表選手の原裕美子さんが、コンビニで万引きをしたとして逮捕されたというニュースが飛び込んできました。また、数日前には、ソチオリンピック金メダリストであるフィギュアスケートのリプニツカヤ選手が引退を表明したことは、記憶に新しいことと思います。

(原選手は2010年の北海道マラソンで優勝しています)

両選手に共通していたことは「摂食障害を患っていた」ということ(詳細はこちらの記事をご参照ください:「女子マラソン元日本代表の万引き事件からみる、女子アスリートと摂食障害の問題」「リプニツカヤ電撃引退 フィギュア選手“拒食症”の壮絶実態」)。

走る人の間でよく知られていることのひとつに、「1kg落とすと、タイムが3分縮まる」ということがあります。フィギュアスケートも然り。体重が軽い方が、ジャンプがしやすいですよね。つまり、マラソンもフィギュアスケートも、体重が軽い方が有利な競技なのです。

しかし、皆さんもご存知のとおり、思春期を迎えると、女性は子どもを産めるようにと体重の増加に伴って、ふっくらとした体つきになってきます。そうなると、競技する上での調子が悪くなるので「痩せなければ!」という強迫的な観念に囚われることになってしまうのです。

過剰な体重制限は、食べても吐いて体重をコントロールしようとしたり、食べずに体重をコントロールしようとしたりと、不健康な方法での体重コントロールを習慣化させてしまいます。それが加速して負のループに陥ってしまったのが、過食症や拒食症といった摂食障害を引き起こすのです。

上述した記事の中で、原さんは「誰にも相談できず、1人で抱え込んでしまいました」と、また彼女を指導していた小出監督は、原さんは「とても真面目な子。素直で練習熱心だった」とおっしゃっています。

摂食障害に陥った女性たちに共通しているのは、原さんのように「周囲の期待に応えなければならない」という真面目な性格の持ち主で、責任感がとても強いところ。だからこそ、「自分ひとりでなんとかしなければ!」と誰にも相談できずに、ひとりで抱え込んでしまうのです。

勝負の世界で生きるということは、普段から常にプレッシャーに晒されているハイストレスな状態です。しかし、周囲にいる選手は仲間である一方で、ライバルでもあるということを考えると、気軽に悩みを打ち明けたり相談したりするということができないのも無理はありません。そのようなことを考えると、トレーナーや指導者が選手の競技のパフォーマンスのみならず、精神状態にも目を向け、いかにサポートしていくのか?が、重要なポイントになってくるのかと思います。

選手の競技結果=トレーナー/指導者の実績…という考え方が先行してしまうと、選手の競技人生だけでなく、ひとりの人間としての人生をも台無しにしてしまう可能性があることは否めません。このような問題を選手個人の問題として捉えるのではなく、トレーナーや指導員も一緒に選手の問題に向き合っていく姿勢が必要です。そのためにも、基本的なメンタルヘルスに関する知識や選手の精神面でのサポートの仕方を学ぶこと、また、必要に応じて専門家と連携をとりながら選手をサポートする体制を整えることはとても重要ですし、スポーツ界全体で早急に取り組まなければならない課題のように思います。

アスリートは、一流に近づけば近づくほど、強靭な身体能力と精神力を持っていると思われがちですが、アスリートと言えども、ひとりの人間です。私たちと同じように、悩んだり苦しんだりするのです。そんなアスリートたちの「こころ」も大切にすることができれば、きっと、彼らは競技におけるパフォーマンスも上向きになるはず。

原選手の事件はちょっと残念なことではありましたが、これを機に、スポーツ界でもメンタルヘルスに対する関心が高まることを期待したいと思います。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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