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勝手にオススメ(ムーンライト:映画編)

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィスプログレスの向 裕加です。

昨日は、4月にもかかわらず、まさかの吹雪でしたね!朝、窓の外を見て、絶望的な気持ちになりました。そして、今日はうって変わっての快晴で、最高気温も17℃。「春なんだから、こうでなくっちゃ!」ですよね。とは言え、気温差が激しすぎて、身体がその変化についていかない感じは否めません。季節の変わり目は何かと体調を崩しやすい時期でもありますので、みなさんもご自愛くださいませ!

さてさて、今日は久しぶりの勝手にオススメシリーズの映画編。今回は、アカデミー賞ですったもんだがあった作品賞を受賞した『ムーンライト』のご紹介です。

これまでLGBTを題材にした映画でアカデミー賞を受賞した作品はいくつかありましたが、LGBTがテーマとなった映画で作品賞を受賞したのは、この『ムーンライト』が初めてだそうです。そういう意味でもかなりの注目を集めた話題の作品ですが、実際、観てみて驚いたのは、私の予想に反して同性愛が中心的なテーマではないということ。むしろ、誰しもが抱えているであろう人種や性別、年齢、性的指向を超えた普遍的なアイデンティティの葛藤が、アメリカ社会の中で人種的、セクシュアリティ的にマイノリティとされる一個人(主人公シャロン)を通して描かれた物語でした。

あまり詳しく話してしまうとネタバレになってしまうので、控えめにしておこうと思いますが、印象に残ったことを数点ご紹介しますね。

まだ小学生の子どものシャロンが、父親のように慕っている麻薬密売人ファンに"What is faggot?"と問うシーン。"faggot"とは同性愛者であるgayの差別的な表現。彼自身、自分のセクシュアリティについて、まだハッキリと自認していないにもかかわらず、周りはそんな彼の本質を見抜き、彼をカテゴライズし、さらに偏見の眼差しを投げかけてくるのです。そんなシャロンに対して、"faggot"の意味を教えたファンは静かにこう語りかけます。

「gayだと言わせても、決して、faggotと呼ばせるな」

ファンの語り口はとても穏やかだったのですが、「それが自分(らしさ)であるならば、堂々と生きるんだ。胸を張って生きろ!」という強いメッセージが込められているように感じられ、こころが揺さぶられました。

もう一場面、こころ揺さぶられたシーンは、このシーン。ファンがシャロンに泳ぎ方を教えるシーンです。

海の中に入って「俺がちゃんと支えているから、リラックスして身体を水に任せるんだ」的なことをファンが言うのですが、その言葉を信頼して、海に身を任せて浮くシャロンは、ぐんぐんとファンに教えられたことを吸収して、上手に泳ぐことができるようになります。そして海から上がってきて、ファンはシャロンにこんな言葉を投げかけるのです。

"At some point, you gotta dicide for yourself who you will be.  Can let nobody make that decision for you.(人生のどこかで、自分の道は自分で決めなければならない。周りに決めさせてはならないんだ)”

人生という大海原に乗り出して、自分の道を自分で決めるとき、不安はつきもの。でも、心から信頼できる誰かに支えられていると知っているだけでも、頑張ってみよう、挑戦してみよう、乗り越えてみよう!という気持ちになれる。そういう人に支えられ、自分の力を信じて行動してみたとき、初めて自分の力で大海を渡っていくことができるのだ。

そんなことを感じさせる、とても素晴らしいシーンでした。

社会や周囲の目、世間体や常識など、自分自身の気持ちに素直になって”自分らしく”生きることは、大人になればなるほど難しく、時間がかかるもの。それでも自分自身と向き合う中で自分が何者かであること(アイデンティティ)を知り、それを自分自身が受容できたとき、真の意味で「自由」になれるのだと思います。それこそが”Let it go”ですよね!

『ムーンライト』は、アメリカ映画にしてはエンディングがかなりモヤっとしています。でも、時間が経つにつれて、ジワジワ良い味が出てくるスルメみたい(笑)な映画です。そういう意味でも、期待を裏切られた映画でしたね。ストーリーは案外淡々と展開していくので、感情がジェットコースターのように揺さぶられることはないものの、ジンワリ感情が揺れ動く作品です。恐らく、それは、静かながらもポエティクで美しい心情描写がされていたから。特に、映像は本当に綺麗です。貧困や暴力、差別や偏見など、かなりダークなトピックが取り上げられているにもかかわらず、ズシッとした重たい気持ちにならないのは、美しい映像のおかげではないかと、個人的には思います。

最近、何かとLGBTの話題がホットな札幌ですが、LGBTに関心がある人も、そうでない人にも見ていただきたい作品です。ただ、勝手にオススメ!ながらも、万人ウケするタイプの映画ではないことだけは、最後にお断りしたいと思いますが、機会があれば、私はもう一度くらいは劇場に足を運んで観たいと思います。

⇨ 予告編はこちらをクリック!

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臨床心理士  向 裕加

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