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『アナと雪の女王』 隠されてしまったメッセージ その2

札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

昨日お届けした【『アナと雪の女王』 隠されてしまったメッセージ その1】では、英語版を日本語に翻訳する過程の中で映画のメッセージ性が変わってしまっている…ということをお伝えしました。そのひとつが「エルサの親に対する怒り」。英語版ではダイレクトに表現されているものが、日本語版ではかなり曖昧な表現に変えられています。個人的には、これは文化的な要因が大きく関与しているように思います。

その文化的要因とは、何か?

それは「親孝行」という言葉に代表されるような江戸時代から日本社会に根付いている「親が絶対」という儒教の教えからくる倫理観だと思います。

徳川幕府は政権を安泰化させるために、儒教の教えを積極的に取り入れました。子が親に逆らってはならないという絶対的な倫理観は、家や社会における序列の絶対性を日本社会の文化に植えつけ、それは「目上の者を立てなければならない」という考えにまで広げられました。親に逆らってはならない。目上に逆らってはいけない。政府に逆らってはならない。この考えが「個の感情を殺すことは当たり前」であることを定着化させ、時代を超えて脈々と現代社会にも受け継がれているのです。

「個の感情を殺すことが当たり前」で「子が親に逆らってはいけない」日本文化に、「抑え込んだ感情を解き放とう」「親の呪縛から自由になろう(親に逆らう)」”Frozen”や”Let it go"は相容れないコンセプトであるが故に、原作が届けようとしていたメッセージが翻訳の過程の中で隠されてしまったのでしょう。私はそう感じています。

しかし、これは意図的に操作されたものであるとは全く思いません。文化や社会規範などは、あまりにも当たり前すぎて違和感を抱きにくいという側面がありますから、無意識のうちに日本社会で受け入れられやすい形に翻訳された、つまり、隠されちゃったのでしょう。実際、「ありのままの自分になるの〜♪」が大勢の子どもだけでなく大人にも受け入れられたのですから、成功といえば成功だったと思いますし、訳者さんの力量は素晴らしいものだったと思います。

ただ、ひとつだけ臨床心理士として残念に思うことがあります。それについては、次回のブログでお届けしますね。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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