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『アナと雪の女王』 隠されてしまったメッセージ その1

札幌市大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

最近は日中に雪が溶けたかと思うと、真夜中に雪が降り積もって朝には一面が真っ白な日が続いていますね。春が来たかと思ったら、冬に舞い戻る。そんな時期にテレビで『アナと雪の女王』が放映されたそうですが、みなさんはご覧になりましたか?

我が家にはTVがないので私が観ることはなかったのですが『アナと雪の女王』の放映があった後、Yahooニュースでこんな記事を見つけました。

日本版『アナと雪の女王』現象とはなんだったのか?ー英語版とまったく違う物語の秘密

深い考察をしているこの記事を読んでいて、私は「ふむふむ」と感心しっぱなしだったのですが、個人的に気になったのは「隠されたエルサの親に対する怒り」の部分。記事の中でも指摘されているように『Let it go』の歌詞の訳され方が、本来観客に伝えようとしているメッセージとは異ったメッセージを届ける日本語になってしまっているんです。

“Be the good girl you always have to be.
 Conceal, don't feel, don't let them know."

…という部分は、本来は「いつもイイ子でいなければならない。隠しなさい、感じてはダメ(感情を殺しなさい)、周囲に知られてはいけない」という意味です。そして、着目すべき点は、この部分を歌うエルサの動作。親が子どもを叱るときや言いつけを守らせるときに人差し指を立てて振る、というジェスチャーをしているんですよね。「いつもイイ子でいなければならない。隠しなさい、感じてはダメ(感情を押し殺しなさい)、周囲に知られてはいけない」というのは、幼いエルサが両親から言われ続けてきた言葉であると容易に推察できます。

あと、意外と知られていないのが、この映画のタイトル。実は、”凍てついた””凍ってしまった”という意味の『Frozen』が原題なのです。両親の期待に添って「イイ子」でいるために、自身の感情を押し殺しているうちに凍ってしまった(frozen)エルサの心。そんな心(感情)の解放と両親がエルサに植えつけた「イイ子でなければならない」という呪縛からの解放こそが、『Let it go』という言葉に込められたメッセージなのだと思うわけです(”Let ~ go”とは「手放す」とか「解放する」という意味ですからね)。ですが、日本語版では、この箇所が「とまどい、傷つき、誰にも打ち明けずに悩んでた」というように訳されていて、英語で表現されていることのニュアンスが全く感じられない訳になっています。

字数や時間、リズムに制限が出てくるので、歌詞や映像が伴う会話を訳すことは非常に難しい作業です。それは素人ながらも、通訳や翻訳の仕事をする私にはよくわかります。英語版と日本語版の歌詞の違いは、単純にこのような困難さから生じたものかも知れませんが、記事が指摘する通り「劇場に実際に子どもを連れて行くのは、親であることを考えれば、親に対する批判や恨みが封印されることは、どちらかというと好都合だったのではないか」という考察は、非常に深いと感じました。

実際、この映画は本場アメリカでは親に対する批判や恨みなどのメッセージを含んでいながらも親子一緒に楽しまれていることを考えると、日本語版が異なったメッセージを含んだ内容に書き換えられてしまった背景には、文化的な要因が大きく関与しているからではないかと、個人的に思ったからです。

ちょっと長くなってしまったので、この続きは次回のブログで。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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