カウンセリングと落語の共通点
札幌市中央区大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。
三連休明けの方も多いのではないかと思いますが、みなさんは、どのような三連休を過ごされましたか?私は、三連休初日の夜に大好きな立川志の輔師匠の独演会@ワクワクホリデーホールにラン仲間と一緒に行ってきました。志の輔師匠の落語会に行くのは、多分、1年半(?)ぶりのこと。「久しぶりに志の輔落語をきくことができる!」とワクワクして会場に行きましたが、その期待を裏切ることなくたくさん笑った2時間半を過ごさせてもらいました。志の輔師匠は、創作落語がとてもお上手!今回も、最後までどんなオチになるか想像できないドキドキ感と笑いがたっぷりの「モモリン」(笑)というゆるキャラを題材にした創作落語がピカイチでした!
落語は、私の趣味のひとつです。落語=TV番組「笑点」と思っている方も少なくないと思いますが、ご多分にもれず、私も昔はそうでした。もともと落語好きなパートナーに連れられて行った落語会で、落語=「笑点」ではないことがわかり、また歌舞伎とは異なって、気軽に楽しめる古典芸能だということを知り、以来、頻繁に落語を聞きに行くようになりました。
今回の志の輔師匠の独演会はちょっとお高めで5000円ですが、普通の落語会は3000円台と意外と気軽に楽しめるのも魅力のひとつ。人気の噺家さんたちのチケットは首都圏では争奪戦になるくらいですが、札幌は比較的簡単にチケットを入手することが可能なこともあって、おそらく年に4〜5回は落語会に行っています。
そんなこんなで、今までに色んな噺家さんたちの落語会に行っていますが、マクラ(本題に入る前の導入部分)で「聴衆と噺家の一体感の大切さ」についてお話しされる噺家さんたちは、実に多いです。これは落語だけに限られたことではありませんが、舞台は舞台上の演者が一方的に演じるものではないと思います。舞台の上で演じられていることに対する観客の積極的な関与が、舞台上の演者に伝わって演者のパフォーマンスが変化する。そして、それが、さらなる観客の積極的な関与を促す。この演者と観客の間に生じる相互作用によって、舞台は築きあげられるのだと思います。
カウンセリングは、まだまだ「アドバイスをもらえる場」という認識が根強い感じですが、カウンセリングも舞台のように、クライエント(相談者)とカウンセラーで一緒に築きあげていくものだというのが私の認識です。どんなにカウンセラーの私が頑張ったとしても、相談者の積極的な関与がなければ、カウンセリングの効果はまず期待できません。
カウンセリングの場面でよく訊かれることのひとつに「どうすれば良いですか?」という質問があります。それに対して、アドバイスを与えるのは簡単なことですが、それはあくまでも「私が」良いというものでしかありません。クライエントの方が「こころからそう思えない」ことであれば、アドバイスをする意味は全くありません。なぜならば、頭ではわかるけれども、どうしても「こころからそう思えない」ことを人は受け入れることはできないからです。
カウンセラーとしての私の役目は、クライエントの方のこころの奥底に埋もれている「どうすれば良いか?」を一緒に探していくこと。私は霊能者でもエスパーでもないのでクライエントのこころを見透かすことはできませんし、「正しい答え」を出すことはできませんが、心理学の知識や今までの臨床経験をもとに「どうすれば良いか?」にたどり着くまでのナビゲート役を務めることは可能です。しかし、それがその方にとって「こころからそう(良いと)思えるか」どうかは、つまるところ、その方にしかわからないこと。ですから、「これはどう思う?これはどう感じる?」ということに、クライエントの方が積極的に関与(反応)してくれなければ、ナビゲートをしようにもできないのですが、それを引き出すのも、カウンセラーの力量によるところが多いのも事実です。
噺家さんが観客をナビゲートしつつ、観客が積極的に関与した一体感のある落語会の後は、必ず「あ〜、楽しかった!」という充実感で満たされます。私もクライエントをナビゲートしつつ、積極的に関与してもらい、一体感のあるセッションをして、「あ〜、今日、来て良かった!」と思っていただけるようになりたいもの。私のカウンセリング界の立川志の輔(笑)になるべく修行は、まだまだ続きます。
カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士 向 裕加