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女遊びは芸の肥やし?

札幌市中央区にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

急激に寒くなってきましたね。つい、先日まで「暑い、暑い!」と文句を言っていたのが懐かしいくらい。暑いときは「早く涼しくならないかな~」と思い、寒くなれば「あ~、早く暖かくなってほしいな~」と言うのは、随分、勝手な話ですが、多くの人がそう思っているに違いないと思います。

さて、「勝手な話」と言えば、2016年のお茶の間を騒がせている芸能人の不倫報道。ゲスの極み乙女の川谷絵音や元ファンキーモンキーベイビーズのボーカルのファンキー加藤、三遊亭円楽や桂文枝、中村橋之助などなど...結構なビックネームの方のお名前が上がってきて、私もビックリしました。世間一般的には、彼らは「勝手な男たち」というレッテルを貼られ、批難の集中砲火を浴びせられましたが、「女遊びは芸の肥やし」というような擁護派がいるのも、また事実。そんな話を耳にすると、いつも私の頭にはある人の話が思い浮かびます。

遡ること、私がまだ20代の頃、とある学会でアメリカで開業しているサイコセラピスト(心理療法家)の通訳をする機会がありました。そのとき彼女が語っていたことで特に印象的だったのが、こころの病や悩みを抱えた芸術家にセラピーを実施するときに注意しなければならないことでした。

彼女のクライエントには統合失調症や強迫性障害、ボーダーラインパーソナリティ障害など、「治療する」という意味では非常に困難が伴う問題を抱えた芸術家が多かったのですが、彼女は彼らを「完全に治療しようとしない」のが非常に難しいと言っていたのです。

「え、それはどういう意味?治療者なのに、完全に治療しようとしないことって、どういうこと?」

端くれながらも、サイコセラピスト(治療者)の卵として勉強していた私には、最初彼女の言っている意味がさっぱり分からなかったのですが、彼女が「完全に治療しようとしない」理由を聞いて、「なるほど!」と思いました(以下、彼女が「完全に治療しようとしない」理由)。

セラピストとして、私のクライエントの多くの芸術家たちを「完全に治療する」ことはできる。しかし、彼らを「完全に治療してしまう」ということは、彼らの芸術的な才能を削ぎ落としてしまうことに他ならない。なぜならば、作品に反映された彼らのこころの病や悩み、そして葛藤こそが、彼らの作品が芸術として認められる要素となっているからだ。私が彼らのこころを「完全に治療する」ことは可能だが、そうすることで彼らの作品が芸術としての素晴らしさを失うリスクもある。そうなれば、彼らは社会との接点を失い、自立して生活する術を失ってしまうだろう。それはそれで彼らのためにはならないし、彼らもそれを望んではいない。苦しみや悩み、困難を抱えながらも、制作活動と自立した生活を彼らが継続することができるよう、そのギリギリのラインの精神状態を作り出すことが、セラピストの私に課せられた役目である。しかし、その過程は非常に困難なものである。

なかなか深いですよね。まだまだ初学者の私にとっては思いもよらない観点だったこともあり、あれから10数年という月日が経っているにもかかわらず、時々思い出すほどインパクトが強かったお話でした。

「不倫」や「浮気」は世間の常識からすると逸脱した行為であることを否定はしませんし、そのような行為を肯定したり、推進したりする気もありません。しかしながら、このような世間の常識からかけ離れた経験をしているからこそ生まれる感性や芸術家としての表現力、そして、作品があるのかもしれません。「不倫」や「浮気」は現在の関係性に満足していないから、その穴埋めとして外に関係性を求めることで生まれる行為であると考えると、不倫する人や浮気する人の内部には、何かしらの苦悩や葛藤が存在しています。そこで経験した感情を表現するのが、まさに芸術。ですから、苦悩や葛藤なくしては、その人の芸術家としてのキラリと光るものが損なわれてしまうようにも思うのです。それを考えると「女遊びは芸の肥やし」とはよく言ったもの。ただし、女性が同じことをすると「芸の肥やし」とは思われないのは女性に対する差別だな〜と思いますけどね。

とはいえ、私たちは芸能人でもなく、一般の世間で生きている人間。ですから、自分のパートナーや恋人、配偶者に「不倫」や「浮気」をされて「女遊び(男遊び)は芸の肥やしだから!」と某歌舞伎役者の奥さまのように寛大ではいられないものですし、そうする必要もありません。しかし、なかなか夫婦の問題や恋人との関係性は、友人や知人には相談しにくいもの。そんなときには、第三者とのカウンセリングを通して関係性を見直してみてはいかがでしょうか。解決の糸口が見つかるかもしれません。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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