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福士選手の笑顔の裏にあるこころ

札幌中央区にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

今日は朝から雨ですね。台風が接近しているとのことで、夕方から雨と風が強まると言われています。既に運休が決定しているJRも出ていますので、みなさん帰宅の際はくれぐれもお気をつけ下さい!

さて、8月5日に開会したリオデジャネイロオリンピック。日本からは一番遠いであろう南半球のブラジルで開催されているため、時差で毎日寝不足になりながらもTVの前で応援している方も多いのではないでしょうか。実は我が家にはTVがないため、オリンピックの競技をライブで観ることは不可能なのですが、ラジオを聴いているときに入ってくる情報やインターネットでアップされる最新ニュースをチェックしています。

そんな私の目に今朝飛び込んできたのが、ネットのアップされていた「女子マラソンで惨敗した福士加代子の発言は、本当に『KY』なのか」という記事。惨敗したにもかかわらず、福士選手がゴール直後に笑いながらインタビューに応じていたことに対して、ネット上で「ヘラヘラしている」というバッシングの嵐が起きたとのこと。私は、そのインタビューのときの様子をネットにアップされていた映像(←観ていないという方がいらっしゃったらリンクからどうぞ!)で観ましたが、私の率直な印象は、私は福士さんの態度はまさに「反動形成」によるものだと思いました。

「反動形成」とは、臨床心理学の一学派である精神分析で用いられる用語のひとつです。私たちは、こころが危機的な状態に陥ると、様々な方法を用いて何とかして自分のこころの安定性を確保しようとします。このようなこころの働きは「防衛機制」と呼ばれていて、「反動形成」はその様々な方法のうちのひとつ。「反動形成」はこころの奥底に抑え込まれた考えや感情とは全く逆のことをして、こころの安定性を確保しようとするこころの働きです。

「金メダル取れなかったー!でも、頑張った~!」と福士さんは笑いながらそう言っていましたが、私には今にでも泣き出しそうなくらいのように見えました。まさに「顔で笑って、こころで泣いて」。こころの奥底に抑え込まれた悔しさや辛さ、苦しさをそのまま出してしまっては、自分を保つことができないとどこかで感じていたのでしょう。自分のこころを守ろうとした「反動形成」という「防衛機制」が無意識のうちに働いて、彼女はインタビューに笑顔で応じていたのだと思います。

オリンピックに出る以上、誰もが目指すメダル。福士選手の場合、オリンピック代表選手になるまでの過程も大変でしたよね。「ここまでの過程も、レースも全部苦しいけど、オリンピックのマラソンは出るもんだね。楽しいよ。」リオでの42.195キロを含む彼女のここまでの道のりが険しかった分、メダル争いにすら届かなかったレース運びは、福士選手自身が一番悔しかったことでしょう。そして、「金メダルをとる」と大きな声で宣言しながらも、そうすることができなかったことに対して、申し訳ないという気持ちも人一倍強かったはず。押しつぶされそうなプレッシャーと闘い、自分自身と向き合ってきた日々。インタビューの最後の方で「もう泣きたい!」と、ここでも笑顔でそんなことを口にしていますが、これが彼女の本音だったんじゃないかな~と思いました。

結果だけを見て、そして、彼女の外側だけを見て、「へらへらしている」「品がない」「日の丸を背負っている意識がまるで感じられない」と批判するのは簡単です。でも、彼女がここまで歩んできた道をトータルで見たとき、彼女の「笑顔」が意味するところが初めて理解できるのではないでしょうか。

そして、福士選手の素晴らしいところは「負けたけど、こんなに頑張った自分はいません!」と、レースで負けたことを潔く認めつつも、自分自身の努力や頑張りをしっかりと肯定できていること。自分の良かったところ、そして足りなかったところをありのままに受け入れることができる福士選手。結果は14位でしたが、果敢に自分に挑むその姿は金メダルそのものだったと思いました。私は鈍足ランナーで彼女の足元にも及びませんが、同じ42.195キロを走るランナーとして、彼女のことをこころの底から尊敬しています。

福士選手、お疲れさまでした!そして、またその素敵な走りを私たちに見せて下さいね!

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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