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こころの栄養は充分ですか?

札幌大通にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

2014年に厚生労働省が行った職場における
ストレスの原因に関する調査の第1位は「人間関係」でした。
職場に限らず、私たちの日々の生活の中での
ストレスの原因は「人間関係」がその大部分を占めています。

人間関係を円滑にするためには、コミュニケーションが大切であり、
その質を高めることが最も有効なメンタルヘルス対策であることは、
誰もが同意する話だと思いますが、一体どれだけの人が
「相手を認めることができ、自分も認められている」
と実感することができているでしょうか?
あらゆる場面における人間関係を振り返ったとき、
自信を持って「相手を認めることができ、自分も認めらている」
と実感できている人は、案外少ないのではないかと思います。

私たちの身体が健康な状態を保つため栄養や睡眠が必要なように、
こころの健康を維持するためには、こころにも栄養が必要です。
「認められた」という実感は、動機づけの大きな原動力となり、
私たちの成長を促してくれる一番の源泉です。
「自己および他者の存在や価値を”認めるため”の言語や働きかけ」
心理学では「ストローク」と呼んでいますが、
これがまさに私たちに必要な「こころの栄養」なのです。

このストロークには「肯定的な(プラスの)ストローク」
「否定的な(マイナスの)ストローク」の2種類があります。

肯定的なストロークは受け取ると快適な気持ちになるもので、
なでる、さする、挨拶する、褒める、感謝する、微笑む…etc.があります。
例えば、学校で先生に褒められた、憧れの男性から笑顔で会釈された、
任されていたプロジェクトが成功して評価してもらえたなど、
良いことがあると気分も良いですよね。

逆に、否定的なストロークは受け取ると不快感や苦痛を味わうもので、
叩く、非難する、叱る、忠告する…etc.があります。
例えば、上司に叱られた、恋人や配偶者と喧嘩をした、
お客からクレームを受けたなど、
イメージしただけでも気分が落ち込んでしまいそうですよね。

人は誰しもがストロークを欲する生き物です。
子どもは親から、妻は夫から、部下は上司から、生徒は先生から…etc.
そして、誰しもが肯定的なストロークを欲していますが、
肯定的なストロークがもらえないときは、
「無視」されるよりはマシということで、
無意識のうちに否定的なストロークを欲するのです。
なぜなら「無視」「無関心」は、
自分や相手の存在や価値を認めない状態で、
こころの栄養を枯渇させるものだからです。

妹や弟が生まれると、それまでは良い子だったのに、
突然わがままになったり、オネショをし始めたり、
自分よりも可愛がられる妹や弟をいじめるなどはよくある行動ですが、
これは両親に見てもらえない(無視)よりも「ダメでしょ!」
と叱られる方がまだマシと潜在的に思っている証拠です。

また、思春期の子どもたちの非行や問題行動も然り。
部下の頻繁にミスをする、遅刻が増えた、
やるべきことをやらない…などの問題行動も、
同じようなことが言えるでしょう。

これらは全てストローク飢餓に陥りかけている
「こころの悲鳴」なのです。

したがって、そのような問題行動などを目にしたら、
「肯定的なストロークを増やす」よう心がけてください。
具体的には先ほども述べたように、挨拶をする、
褒める、感謝するなどの声掛けを行ってください。
直ぐに行動が改善されなくても
「声を掛け続ける」というのがポイントです!

問題が繰り返されると、どうしても
「言っても無駄」「言うこっちも気分が悪くなる」と、
声掛け自体をストップさせてしまったり、
「本人が気づくまで放っておくしかない」
という気持ちになってしまいがちですが、
これは「無視」や「無関心」と同じことです。

そうなるとマイナスのストロークどころか、
ストロークそのものがない状態に陥ってしまいます。
この状態はこころの栄養失調を引き起こし、
徐々に元気を失ったこころは病気になったりして、
事態は悪化するばかりです。
最悪の場合、「死」に至る可能性さえ出てくるのです。

カナダ出身で交流分析理論を提唱したエリック・バーンは
「人はストロークを得るために生きている」といっています。

それほど、私たちにとって「ストローク」は大事なものなのですが、
IT化や個人主義が進んだことで他者と直接関わる機会が
少なくなったことに加え、成果主義が台頭する昨今は、
昔と比べて「認められている」と実感する機会がグッと減りました。
つまり現代社会に生きる私たちは「ストローク不足」、
つまり、「
こころの飢餓状態」に陥りやすい状況と
常に背中合わせで生きているのです。

自分自身や周りの人に、ちょっとした問題行動の兆候が現れ始めたときには、
「些細なこと」と受け流してしまわずに、もしかしたら、
「こころの栄養失調から生じているのかもしれない」と疑ってみて下さい。
そして、肯定的なストロークで十分な栄養補給をしてください。

人と人の繋がりが希薄化した今だからこそ、
意識的に肯定的なストロークを与えることが重要なのです。

カウンセリングオフィス プログレス
臨床心理士  向 裕加

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