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「母の愛情」と思われるものの裏に潜んでいるもの その3

札幌市中央区にあるカウンセリングオフィス プログレスの向 裕加です。

シリーズでお届けしている【「母の愛情」と思われるものの裏に潜んでいるもの】。本日は、昨日の続きをお届けします(過去の記事については、このページの下にある【関連記事】からどうぞ)。

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「何かが違う」という違和感と得体の知れない「生きづらさ」に悶々とする日々。それはどこからやってくるものなのだろうか?その正体をつかむことができないまま、彼女の時間はただただ過ぎ去ってゆくのでした。

そんな彼女がそろそろ本格的に就職活動を始めようかということを電話で母親と話していたところ、電話口の向こうの母親がこんなことを彼女に言ってきました。「もちろん、こっちで就職するのよね?お母さん、あなたが帰ってくるのが待ち遠しいわ〜。」そんな母親のセリフを耳にして、彼女はひどく動揺している自分に初めて気付くことになります。

「地元に就職して、お母さんの近くで暮らすことになれば、今まで以上にお母さんの愚痴を聞かなければならなくなる」と想像すると、気持ちがドーンと沈み込みました。だからと言って、地元以外の土地に就職したとしても、母親が今まで通り電話をかけてくることには変わりないのを彼女は知っています。むしろ、「私は、こんなに我慢してあなたを大学まで出してあげたのに、お母さんを見放して遠くに行ってしまうだなんて…」と怨みつらみをこぼされることはほぼ間違いないだろう。ある程度予想できるだけに、どちらにしても母親から逃れられることはできないという絶望感に近いものを彼女は感じとっていたのです。

何よりショックだったのは、子どものためにとたくさんの我慢と苦労をしてここまで私を育ててくれた母から「逃れること」を考えていた自分がいたという事実。「そんな風に思う私は、なんてダメな娘なんだろう!お母さんを支えてあげないといけないのに!」と思えば思うほど、そんな気持ちとは裏腹に「お母さんから逃げたい」という気持ちが強くなり、どうして良いか分からずに途方に暮れる毎日を過ごしていました。

しかし、転機はあっけない形で訪れます。

ある週末、親戚の葬儀に参加するために、彼女は久々に地元に帰ることになりました。葬儀が終わり、実家でゆっくり過ごしていたときのこと。お酒を飲みながらも通夜ではおとなしくしていた父親は、帰宅してからもお酒を飲んでいました。何が父親の気に障ったのかはわからないのですが、父親は怒鳴りながら急にテーブルにあったものを母親に投げつけ始めました。いつもよりもその様子が酷かったのでそばにいた彼女の弟が父親を止めに入ったところ、父親はそれが気に入らなかったようで「なんだ、お前〜!子どものくせに、夫婦の問題に口出しするとは上等じゃないか!」と声を荒げて、台所から包丁を持ち出してきたのです。

2階の部屋で寛いでいた彼女のところにもその声は響き、彼女は急いで1階へと降りていきました。そこで彼女が見たものは、包丁を持ち出している父親、そんな父親に必死で冷静に対応しようとしている弟、そして、あたふためいている母親。危険を察知した彼女が警察に通報しようとリビングにある電話に手を伸ばそうとしたとき、とっさに母親が声を上げました。

「警察に電話しようとしてるの?それだけはやめてちょうだい!パトカーが来たら、ご近所にどう思われると思うの!?そんな恥さらしなことをするだなんて、お願いだからやめてちょうだい!それにそんなことをしてお祖母ちゃんに何て言われると思うの?叱られるのは、お母さんなのよ!」

その母親の言葉で、彼女はハッと目を覚ますことになるのです。
「子どもが危険にさらされているというのに、お母さんが本当に守りたかったのは『体裁』だったの!? いつも、あれだけ『我慢しているのは、あなたたちのため』と言っていたのに、私たちのことはどうでもよかったの!?」
落胆と怒り。悲しみと困惑。裏切りと失望。言葉にならない思いと様々な感情が入り乱れながらも、彼女は、客観的、かつ冷静に状況を把握し、母親の反対を振り切って110番通報したのでした。

パトカーが来ると思いきや、交番が近かったことと家庭内での問題ということで、駆けつけたのは自転車に乗った警官2人。ご近所の恥さらしになるという母親の心配は杞憂に終わった上に、警察を呼ばれたことで父親も相当反省したようで、自宅で母親に悪態をつくことはほとんどなくなりました。

今まで母親が「あなたたちのために我慢している」と呪文のように繰り返していた言葉を、彼女は「母の愛情」だと信じて疑いもしませんでしたが、この事件を境に、それは本当に「母の愛情」だったのだろうか?という疑問を抱くようになりました。「母の愛情」だと思い込んでいたものの裏には、ひょっとしたら何かが潜んでいたのかもしれない。そんな思いから、彼女は母親との関係性について見直すことを決心したのでした。

関連記事:「母の愛情」と思われるものの裏に潜んでいるもの その1     
     「母の愛情」と思われるものの裏に潜んでいるもの その2

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