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「母の愛情」と思われるものの裏に潜んでいるもの その1

札幌市中央区にあるカウンセリングオフィスプログレスの向 裕加です。

外は酷い天気ですね。朝は酷い雷、そして、日中は雨に突風、時々みぞれ混じりの雨。冬の足音が少しずつ近づいていることを実感して、少しばかりブルーな気持ちになってしまいました。そんな天気の今日、みなさんを更にブルーな気持ちにさせてしまうかも(?)知れませんが、前回に引き続き「家族関係」をテーマにお送りしていきたいと思います。

東日本で大震災が起きた2011年の今年の漢字は「絆」でした。それを機に「絆」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。その「絆」という言葉に影響されたかのように、震災をきっかけに結婚し家族となったカップルが増えましたが、そんなニュースを耳にするたび、私は「家族の絆」って一体何なんだろう?と考えるようになりました。

というのも、「家族の絆」という言葉が持つ美しい響きやイメージとは裏腹に、「家族の絆」の実態は私たちが想像してるような美しいものではなく、もっとドロドロとしたもので、呪縛ようにその家族のメンバーを苦しめるパワーも持っているということを私は知っていたからです。

高校時代に不登校になったある女性は、当時心療内科にかかった際、担当した医師から「あなたが不登校になったのは母親のせいだ」と言われたそうです。彼女は決めつけのようなその医師の言動に憤慨し、別の心療内科へ行くことにしました。その先生は一方的に母親を責めることはしなかったので通うことにしましたが、学校に行けない日は1年以上続きました。それほど話をよく聞かずに「不登校になったのは母親のせいだ」という医師の発言は確かに一方的であり、彼女が怒るのも無理はないと思いましたが、実に的を得た指摘であったことに彼女が気づいたのは、それから何年も経ってからのことでした。

彼女の家族は両親と彼女、弟の4人家族で、地方に住んでおり、そこでは父親は地元の名士として名が通っていました。家の外ではしっかりとしており人望もある父親でしたが、アルコール依存症とまではいかずとも、家に帰ってお酒が入ると豹変し、母親を罵倒したり物を投げつけたりすることがしばしばでした。

近所に住む姑は息子の家での悪態を知りながらも、それは「旦那をちゃんと面倒みることができない嫁が悪い」と彼女の母親を責めるのみ。母親はなすすべもなく、ただただ耐え忍ぶ毎日を送っていたとのことでした。彼女はそんな母親の苦労を目の当たりにして「お母さんに迷惑をかけて、これ以上悲しい想いをさせてはならない」「ちゃんとしなくちゃ」と幼い頃から思っていたそうです。

彼女が思春期を迎える前後から、母親は自分の夫や姑の愚痴を彼女に溢すようになります。「苦労している母親が私に愚痴をこぼすことで、少しでも楽になるのであれば…」という思いから、母親の愚痴を聞き始めた彼女ですが、いつの間にか、母親と一緒にいるときは常に彼女が母親の愚痴を聞く役になり、そして母親は会話の最後に毎回あるセリフを付け加えるのを忘れませんでした。

「お父さんと離婚できれば良いけど、高卒のお母さんができる仕事なんかないのよ。お金がなかったら、あなたと〇〇(弟)を高校にも大学にも行かせることができなくなってしまうでしょ。私みたいにならないためにも、あなたたちにはちゃんとした仕事について自立してもらいたい。大学に行って欲しい。あなたたちのためだと思うからこそ、我慢もできるのよ」

そして、そんな母親のセリフを聞いて、彼女はいつもこう思うのでした。「お母さんは、私たちのために我慢をしてくれている。苦労をしているお母さんに、これ以上の苦労をかけてはいけない。愚痴を聞くことくらいしかできないけど、お母さんの力にならなければ。もっと、もっと頑張らなくちゃ!」

母親の感情のゴミ箱となった彼女は、何とか母親に「迷惑をかけることなく」「ちゃんと」そのゴミを処理しようと試行錯誤しますが、まだ高校生の彼女にはそんな知恵も、力も、術もありませんでした。そして、ついには学校にも行くことができないくらいのエネルギーを消耗してしまうのです。

罵倒されても、ときには父親に物を投げつけられても、それを耐え忍び我慢しているのは、私たち子どもに対する「愛情」なのだと信じて疑いもしなかった彼女。こんなにも自分たちのために献身的になってくれているお母さんが、私が不登校になった原因とは一体どういうことなのか?悪いのはお母さんではなく、お母さんを罵倒したり、暴力的になるお父さんではないか?苦労しているお母さんのことをよく知りもしないくせに、一体、何を言い出すんだ、この医者は?

初っ端から一方的に母親を否定した心療内科医に怒りを覚えた彼女は別なクリニックに通うことにしたため、その医師の発言の「真意」はわかりません。しかし、その医師は、彼女が母親の「愛情」と信じて疑わなかったものの裏に潜んでいたものをちゃんと見抜いていたのではないか。彼女の話を聞いて、私はそう思いました。

「愛情」と思われるものの裏に潜んでいたもの。みなさんは、それは何だと思いますか?

続きは、また次回に…ということで。

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臨床心理士  向 裕加

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